位相の導入は「開集合系」「閉集合系」「開核作用子」「閉核作用子」「近傍系」などのいずれからも行えますが,この記事では特に「開集合系」により位相を導入します.
位相
(i) \(S\in \mathfrak{O}\) かつ \(\emptyset\in \mathfrak{O}\)
(ii) \(O_1,O_2\in \mathfrak{O}\) ならば \(O_1\cap O_2\in \mathfrak{O}\)
(iii) \(O_{\lambda}\in \mathfrak{O}\ (\lambda\in\Lambda)\) ならば \(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}O_{\lambda}\in \mathfrak{O}\)
(ii) では有限個の \(\mathfrak{O}\) の元の積集合が \(\mathfrak{O}\) の元となることを条件としていて, (iii) では無限個の \(\mathfrak{O}\) の元の和集合が \(\mathfrak{O}\) の元となることを条件としています.
(1) 距離空間 \(\mathbb{R}^n\) に対して, \(\mathbb{R}^n\) の開集合系 \(\mathfrak{O}\) は位相となる.
(2) 集合 \(X\) に対して, \(X\) の部分集合全体の集合 \(\mathfrak{P}(X)\) と, \(\mathfrak{S}(X)=\{\emptyset,X\}\) は位相となり, \(\mathfrak{P}(X)\) を離散位相, \(\mathfrak{S}(X)\) を密着位相という.
(3) \(S=\{p,q\}\) とすると, \(S\) の位相となりうる集合系は次の 4 つのみである. \(\mathfrak{O}_1=\{\emptyset,S\}\) , \(\mathfrak{O}_2=\{\emptyset,\{p\},S\}\) , \(\mathfrak{O}_3=\{\emptyset,\{q\},S\}\) , \(\mathfrak{O}_4=\{\emptyset,\{p\},\{q\},S\}\)
(4) 集合 \(I=[0,1]\) に対して,部分集合系 \(\mathfrak{O}=\{[0,1/n]\ |\ n\in \mathbb{N}\}\cup\{\emptyset\}\) は位相となる.
開集合・閉集合
位相の例で見たように距離空間における開集合系は位相となります.このことから位相空間の上での開集合を次のように定義します.
距離空間において,集合 \(S\) の部分集合 \(O\) が開集合であった場合, \(A=S\setminus O\) は閉集合となるので,位相空間の上での閉集合を次のように定義します.
定義から明らかに,位相空間 \((S,\mathfrak{O})\) に対して, \(\emptyset,S\) は開集合かつ閉集合となります.
また,離散位相の任意の元は開集合かつ閉集合となります.
閉集合に関して次の定理が成り立ちます.
(i) \(S\in \mathfrak{A}\) かつ \(\emptyset\in \mathfrak{A}\)
(ii) \(A_1,A_2\in \mathfrak{A}\) ならば \(A_1\cup A_2\in \mathfrak{A}\)
(iii) \(A_{\lambda}\in \mathfrak{A}\ (\lambda\in\Lambda)\) ならば \(\bigcap_{\lambda\in\Lambda}A_{\lambda}\in \mathfrak{A}\)
集合 \(S\) の位相である開集合系 \(\mathfrak{O}\) に対して閉集合系 \(\mathfrak{A}\) は一意に定まります.
逆に上の定理の条件を満たす \(S\) の閉集合系 \(\mathfrak{A}\) に対して, \(S\) の位相である開集合系 \(\mathfrak{O}\) は一意に定まります.
このため,集合 \(S\) に対して開集合系 \(\mathfrak{O}\) を定める操作と閉集合系 \(\mathfrak{A}\) を定める操作は同じものとなります.
開核・閉包
開核作用子と閉包作用子について次の定理が成り立ちます.
(i) \(S^{\circ} = S\) .
(ii) 任意の \(M\subset S\) に対して \(M^{\circ} \subset M\) .
(iii) 任意の \(M,N\subset S\) に対して \((M\cap N)^{\circ} = M^{\circ}\cap N^{\circ}\) .
(iv) 任意の \(M\subset S\) に対して \(M^{\circ \circ} = M^{\circ}\) .
(i) \(\overline{\emptyset} = \emptyset\) .
(ii) 任意の \(M\subset S\) に対して \(\overline{M} \supset M\) .
(iii) 任意の \(M,N\subset S\) に対して \(\overline{(M\cup N)} = \overline{M}\cup \overline{N}\) .
(iv) 任意の \(M\subset S\) に対して \(\overline{\overline{M}} = \overline{M}\) .
位相 \(\mathfrak{O}\) を定める操作は上の定理の条件を満たすような写像(開核作用子または閉包作用子)を定める操作と同じものとなります.
近傍
点 \(x\in S\) の近傍全体を \(x\) の近傍系とよび,次の定理を満たします.
(i) 任意の \(V\in V(x)\) に対して, \(x\in V\) .
(ii) \(V\in V(x)\) で \(V\subset V’\) ならば, \(V’\in V(x)\) .
(iii) \(V_1,\ V_2\in V(x)\) ならば, \(V_1\cap V_2\in V(x)\) .
(iv) 任意の \(V\in V(x)\) に対して次を満たすようなある \(W\in V(x)\) が存在する. $$\forall y\in W,\ V\in V(y)$$
位相 \(\mathfrak{O}\) を定める操作は \(x\in S\) の各点で,上の定理の条件を満たすような集合系を定める操作と同じものとなります.
ここまでで,(証明は省きましたが)集合 \(S\) に位相構造を定めるには「開集合系」「閉集合系」「開核作用子」「閉核作用子」「近傍系」いずれか 1 つを決定すれば良いことがわかります.