正則関数【複素解析入門2】

【複素関数入門】

今回は正則関数について解説していきます.

 

1. 複素関数の定義

複素数の集合 \(A\) の点 \(z\) を複素数の集合 \(B\) の点 \(w\) を対応させる写像

$$f:A\ni z \longmapsto w \in B$$

複素関数といい, \(A\) を \(f\) の定義域, \(B\) を \(f\) の値域といいます.

複素関数 \(f\) は関数 \(u:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}\) , \(v:\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}\) を用いて

$$f(z)=f(x+iy):=u(x,y)+iv(x,y)$$

とも表せます.

2. 正則関数の定義

2.1. 連続の定義

連続の定義
複素関数 \(f\) が点 \(z_0\) で連続であるとは, $$\lim_{z\rightarrow z_0}f(z)=f(z_0)$$ を満たすことである.
また, \(f\) が領域 \(D\) で連続であるとは \(D\) の各点で \(f\) が連続であることをいう.

また,連続の定義は \(\varepsilon-\delta\) 論法により次のように書き表せます.

連続の定義( \(\varepsilon-\delta\) )
複素関数 \(f\) が点 \(z_0\) で連続であるとは, $$\forall\varepsilon\gt 0,\exists\delta\gt 0\ s.t.\ |z-z_0|\lt \delta \Longrightarrow|f(z)-f(z_0)|\lt\varepsilon$$ を満たすことである.

次の多項式は複素平面上で連続である.ここで \(a_n\) は複素数係数である. $$f(z)=\sum^n_{k=0}a_kz^k=a_0+a_1z+a_2z^2+ \cdots +a_nz^n$$

証明
任意に \(\varepsilon\gt 0\) をとる.このとき, $$|f(z)-f(z_0)|\leq \sum^n_{k=1}|a_k||z^k-{z_0}^k|$$ よって, \(|z-z_0|\lt\delta\) であるとき, \begin{eqnarray} |z^k-{z_0}^k| &=& | (z-z_0+z_0)^k-{z_0}^k | \\ &=& \left| \sum_{i=0}^k {}_kC_i (z-z_0)^i{z_0}^{k-i}-{z_0}^k \right| \\ &=& \left| \sum_{i=1}^k {}_kC_i (z-z_0)^i{z_0}^{k-i} \right| \\ & \lt &\delta \sum_{i=1}^k {}_kC_i \delta^{i-1} |z_0|^{k-i} \\ \end{eqnarray} が成り立つので, \(\delta\lt 1\) としておけば, $$\sum_{i=1}^k {}_kC_i \delta^{i-1}|z_0|^{k-i} \lt \sum_{i=1}^k {}_kC_i |z_0|^{k-i} = B_k$$ であるので, $$|z^k-{z_0}^k| \lt \delta B_k\ .$$ したがって, $$|f(z)-f(z_0)|\lt \delta\sum^n_{k=1}|a_k|B_k = \delta B$$ であるので, \(\varepsilon\) に対して \(\delta\) を \(\delta\leq \varepsilon/B\) とおけば,多項式は複素平面上で連続の定義を満たす.

連続関数に関して実数変数の関数と同様に次のことが成り立ちます.(証明略)

連続関数の演算
連続関数 \(f(z),g(z)\) に対して, $$f(z)\pm g(z),\ \ f(z)g(z),\ \ \frac{f(z)}{g(z)},\ \ f(g(z))$$ は連続関数である.(商に関しては \(g(z)\neq 0\) を,合成関数に関しては \(g\) の値域が \(f\) の定義域に含まれることを仮定している)

 

2.2. 微分の定義

微分の定義
複素関数 \(f\) に対して,点 \(z_0\) での微分 \(f'(z_0)\) を次で定義する. $$f'(z_0)=\lim_{\Delta z\rightarrow 0} \frac{f(z_0+\Delta z)-f(z_0)}{\Delta z}$$ 点 \(z_0\) で \(f'(z_0)\) が存在するとき \(f\) は \(z_0\) で微分可能という.

多項式は \(f(z)=\sum^n_{k=0}a_kz^{k}\) は複素平面上で微分可能で,その微分は次のように与えられる. $$f'(z)= \sum^n_{k=0}ka_kz^{k-1} =a_1+2a_2z+ \cdots +na_nz^{n-1}$$

証明
\begin{eqnarray} & & \lim_{\Delta z\rightarrow0}\frac{\sum^n_{k=0}a_k(z+\Delta z)^{k}-\sum^n_{k=0}a_kz^{k}}{\Delta z} \\ &=& \lim_{\Delta z\rightarrow0}\sum^n_{k=0}\frac{a_k}{\Delta z} \{(z+\Delta z)^{k}-z^{k}\} \\ &=& \lim_{\Delta z\rightarrow0}\sum^n_{k=0}\frac{a_k}{\Delta z} \left( \sum_{l=1}^{k}{}_kC_lz^{k-l}{(\Delta z)}^{l} \right) \\ &=& \lim_{\Delta z\rightarrow0}\sum^n_{k=0} \sum_{l=1}^{k} a_k\ {}_kC_lz^{k-l}{(\Delta z)}^{l-1} \\ &=& \sum^n_{k=0} ka_k z^{k-1} \\ \end{eqnarray}

微分に関して実数変数の関数と同様に次のことが成り立ちます.(証明略)

微分公式
微分可能な関数 \(f(z),g(z)\) に対して,次は微分可能で $$\{f(z)\pm g(z)\}’=f'(z)\pm g'(z)$$ $$\{f(z)g(z)\}’=f'(z)g(z)+f(z)g'(z)$$ $$\frac{f(z)}{g(z)}=\frac{f'(z)g(z)-f(z)g'(z)}{(g(z))^2}$$ $$f(g(z))=g'(z)f'(g(z))$$ が成り立つ.(商に関しては \(g(z)\neq 0\) を,合成関数に関しては \(g\) の値域が \(f\) の定義域に含まれることを仮定している)

また,領域 \(R\) で \(f'(z)=0\) ならば \(f\) は \(R\) で定数関数と成ることも実関数と同様に成り立ちます.

2.3. 正則関数の定義

正則関数の定義
複素関数 \(f\) が点 \(z_0\) で正則であるとは,ある \(\varepsilon\gt0\) があって, \(f\) が \(z_0\) の \(\varepsilon\) 近傍で微分可能なことである.
また領域 \(R\) の各点で \(f\) が正則なとき \(f\) は \(R\) で正則であるといい, \(f\) は \(R\) 上の正則関数または解析関数という.

多項式は \(f(z)=\sum^n_{k=0}a_kz^{k}\) は複素平面上で微分可能であるので,複素平面上の正則関数である.

2.1. ,2.2. より次のことは容易にわかります.

正則関数の演算
正則関数 \(f(z),g(z)\) に対して, $$f(z)\pm g(z),\ \ f(z)g(z),\ \ \frac{f(z)}{g(z)},\ \ f(g(z))$$ は正則関数である.(商に関しては \(g(z)\neq 0\) を,合成関数に関しては \(g\) の値域が \(f\) の定義域に含まれることを仮定している)

 

3. コーシー・リーマンの方程式

コーシー・リーマンの方程式は複素関数に関する重要な式の1つです.

定理 3.1
関数 \(f(z):=u(x,y)+iv(x,y)\) が \(z_0=x_0+iy_0\) で微分可能ならば $$f'(z_0)=\frac{\partial u}{\partial x}(x_0,y_0)+i\frac{\partial v}{\partial x}(x_0,y_0)$$ $$f'(z_0)=\frac{\partial v}{\partial y}(x_0,y_0)-i\frac{\partial u}{\partial y}(x_0,y_0)$$ と表せる.

定理 3.1 の証明
関数 \(f\) を \(z\) で微分可能とすると次の極限は \((\Delta x,\Delta y)\rightarrow(0,0)\) の近づき方に依らない. \begin{eqnarray} &\lim_{\Delta z\rightarrow 0}& \frac{f(z+\Delta z)-f(z)}{\Delta z}\\ =&\lim_{(\Delta x,\Delta y)\rightarrow (0,0)}& \frac{u(x+\Delta x,y+\Delta y)+iv(x+\Delta x,y+\Delta y)-u(x,y)-iv(x,y)}{\Delta x + i\Delta y}\\ \end{eqnarray} したがって, \(\Delta x=0\) として \(\Delta y\rightarrow 0\) としたときと, \(\Delta y=0\) として \(\Delta x\rightarrow 0\) としたときの極限値は等しい.すなわち, \begin{eqnarray} f'(z) &=&\lim_{\Delta y\rightarrow 0} \frac{u(x,y+\Delta y)-u(x,y)+iv(x,y+\Delta y)-iv(x,y)}{i\Delta y}\\ &=&\frac{\partial v}{\partial y}(x,y)-i\frac{\partial u}{\partial y}(x,y)\\ \\ f'(z) &=&\lim_{\Delta x\rightarrow 0} \frac{u(x+\Delta x,y)-u(x,y)+iv(x+\Delta x,y)-iv(x,y)}{\Delta x}\\ &=&\frac{\partial u}{\partial x}(x,y)+i\frac{\partial v}{\partial x}(x,y)\\ \end{eqnarray} これで公式が成り立つことがわかった.

 

コーシー・リーマンの方程式
関数 \(f(z):=u(x,y)+iv(x,y)\) が \(z_0=x_0+iy_0\) で微分可能ならば $$\frac{\partial u}{\partial x}(x_0,y_0)=\frac{\partial v}{\partial y}(x_0,y_0)$$ $$\frac{\partial v}{\partial x}(x_0,y_0)=-\frac{\partial u}{\partial y}(x_0,y_0)$$ が成り立つ.

証明
定理 3.1 の実数部と虚数部を比較すれば直ちに得られる.

次の定理は複素積分の微分可能性を調べるために重要です.

定理 3.2
関数 \(f(z)=u(x,y)+iv(x,y)\) が \(z_0=x_0+iy_0\) とその近傍で偏微分可能で点 \(z_0\) で偏導関数 \(\frac{\partial u}{\partial x},\frac{\partial u}{\partial y},\frac{\partial v}{\partial x},\frac{\partial v}{\partial y}\) が連続かつコーシー・リーマンの方程式を満たすとき, \(f(z)\) は 点 \(z_0\) で微分可能である.

定理 3.2 の証明
\begin{eqnarray} &&f(z+\Delta z)-f(z) \\ &=& u(x+\Delta x,y+\Delta y)+i\ v(x+\Delta x,y+\Delta y) \ – u(x,y)-i\ v(x,y) \end{eqnarray} ここで, \(u(x,y)\) と \(v(x,y)\) の偏導関数が存在し連続なので,二変数関数の平均値の定理より, \(0\lt\theta\lt 1\) が存在して, \begin{eqnarray} && u(x+\Delta x,y+\Delta y)-u(x,y) \\ &=& \Delta x \frac{\partial u}{\partial x}(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y) + \Delta y \frac{\partial u}{\partial y}(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y) \end{eqnarray} が成り立つ.また,コーシー・リーマンの方程式を満たすことを用いて, \begin{eqnarray} &&f(z+\Delta z)-f(z) \\ &=& \Delta x \frac{\partial u}{\partial x}(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y) + \Delta y \frac{\partial u}{\partial y}(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y) \\ && + i\ \Delta x \frac{\partial v}{\partial x}(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y) + i\ \Delta y \frac{\partial v}{\partial y}(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y) \\ &=& (\Delta x + i\ \Delta y) \frac{\partial u}{\partial x}(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y) \\ && \ + i\ (\Delta x + i\ \Delta y) \frac{\partial v}{\partial x}(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y) \\ \end{eqnarray} とかける.したがって, \begin{eqnarray} &&\frac{f(z+\Delta z)-f(z)}{\Delta z} \\ &=& \frac{\partial u}{\partial x}(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y) + i\ \frac{\partial v}{\partial x}(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y) \\ \end{eqnarray} が成り立ち,偏導関数は連続なので, \begin{eqnarray} & & \lim_{\Delta z \rightarrow 0} \frac{f(z+\Delta z)-f(z)}{\Delta z} \\ & & \quad = \lim_{(\Delta x,\Delta y) \rightarrow (0,0)} \frac{\partial u}{\partial x}(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y) + i\ \frac{\partial v}{\partial x}(x+\theta\Delta x,y+\theta\Delta y) \\ & & \quad = \frac{\partial u}{\partial x}(x,y) + i\ \frac{\partial v}{\partial x}(x,y) \\ \end{eqnarray} したがって, \(f(z)\) は微分可能である.

定理 3.2 から複素関数 \(f(x)\) が領域 \(D\) (普通は開集合を考える)で正則であることを確かめるには, \(D\) の各点で,定理 3.2 の条件を満たすことを確認すれば良いことがわかります.

4. 初等関数

4.1. 冪級数とその収束性

\(z\) を変数, \(\{a_n\}\ (n=0,1,2,\cdots)\) を複素数列とするとき,

$$\sum_{n=0}^{\infty} a_nz^n = a_0+a_1z+a_2z^2+\cdots +a_nz^n+ \cdots $$

を \(z\) の(べき)級数,または整級数といいます.

ここでは詳しい説明や証明は省きますが,冪級数は収束半径 \(r\) に対して, \(|z|\lt r\) の範囲で,絶対かつ一様に収束し,項別に微分可能となります.つまり,

$$\left( \sum_{n=0}^{\infty} a_nz^n \right)’ = \sum_{n=0}^{\infty} na_nz^{n-1}$$

が成り立ちます.このとき項別微分して得た冪級数の収束半径は元の冪級数の収束半径と等しく,収束半径は次で得られます.

コーシーの収束判定法
冪級数 \(a_0+a_1z+a_2z^2+\cdots +a_nz^n+ \cdots\) において,収束半径 \(r\) は, $$\frac{1}{r}=\overline{\lim_{n \to \infty}} \sqrt[n]{|a_n|}$$ で求まる.ここで, \(\overline{\lim}\) は下極限を表し, $$\overline{\lim_{n \to \infty}} a_n = \lim_{n \to \infty}\left( \sup_{k\geq n}\ a_k \right)$$ である.

また,絶対収束する級数は足す順番を入れ替えても極限値は不変であることと,収束半径の内側で冪級数が正則な関数に収束することも重要です.(指数関数の導入に用います)

4.2. 指数関数

複素変数を持つ指数関数 \(e^z\) を定義します.このとき実数変数の指数関数が持っていた性質「微分しても変わらない」を複素数の範囲に拡張した指数関数でも持つものとして定義することは自然です.

複素関数 \(f(z)\) が冪級数を用いて,

$$f(z)=a_0+a_1z+a_2z^2+\cdots$$ $$f'(z)=a_1+2a_2z+3a_3z^2\cdots$$

とかけるとします.このとき, \(f(z)=f'(z)\) が成り立つならば, \(a_{n-1}=na_n\) が成り立ちます.また, \(e^0=1\) であるので, \(f(0)=1\) となるようにすると \(a_n=1/n!\) が得られます.

したがって,指数関数を次のように定義します.(自然に実数変数の指数関数の拡張になっている!)

$$e^z=1+z+\frac{z^2}{2!}+\frac{z^3}{3!}+\frac{z^4}{4!}+\cdots$$

最後に \(\sqrt[n]{n!}\rightarrow \infty\) であるので,収束半径 \(r=\infty\) で \(e^z\) は複素平面上で収束し正則な関数であることがわかります.(当然, \((e^z)’=e^z\) である)

複素変数の指数関数でも実数変数と同様に次のことが成り立つ.

指数法則
$$e^{z+w}=e^ze^w$$

証明
\(c\in\mathbb{C}\) を任意の定数とすると, $$(e^{z}e^{c-z})’ = e^{z}z^{c-z}+e^{z}(-e^{c-z})=0$$ より, \(e^{z}e^{c-z}\) は定数であるので \(e^{z}e^{c-z}=e^0e^{c+0}=e^c\) が成り立つ.ここで \(c=z+w\) と置き換えると, $$e^{z}e^{w}=e^{z+w}$$ が成り立つ.

 

4.3. 三角関数

まず複素変数の三角関数を定義する前にオイラーの公式を示します.

4.2.より, \(e^{ix}\ (x\in \mathbb{R})\) の冪級数表示は絶対収束し,足す順番の入れ替えが可能なので,

\begin{eqnarray} e^{ix} &=& \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(ix)^n}{n!} \\ &=& \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^n x^{2n}}{(2n)!} + i \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(-1)^nx^{2n+1}}{(2n+1)!} \\ &=& \cos x + i\sin x \end{eqnarray}

となります.よって,オイラーの公式が得られました.(これで任意の複素数 \(z=x+iy\) が極形式により \(z=r\ e^{i\theta}\) とかけることが言えた!)

オイラーの公式から次の関係式が得られます.

$$\cos x = \frac{e^{ix}+e^{-ix}}{2},\quad \sin x = \frac{e^{ix}-e^{-ix}}{2i}$$

したがって,複素変数の三角関数を実数変数の三角関数の拡張として,

$$\cos z = \frac{e^{iz}+e^{-iz}}{2},\quad \sin z = \frac{e^{iz}-e^{-iz}}{2i}$$

で定義します.この関数は正則関数の和であるので,複素平面上で正則で, \((\sin z)’=\cos z\),\((\cos z)’=-\sin z\) となります.また,定義から三角関数の冪級数表示が,

$$\cos z = 1-\frac{z^2}{2!}+\frac{z^4}{4!}-\cdots$$ $$\sin z = z-\frac{z^3}{3!}+\frac{z^5}{5!}-\cdots$$

であることもわかります.

実は上のように三角関数を定義するとオイラーの公式は自明なものとなっています.

4.4. 対数関数

対数関数は当然ながら指数関数の逆関数として定義したいと考えます.\(w\) を固定して \(w=e^z\) となる \(z\) を考えると,

$$w=e^{z}=e^{x+iy}=e^xe^{iy}=e^x(\cos y+i\sin y)$$

となるので, \(e^x=|w|\) かつ \(y=\arg w\) であることがわかります.したがって,対数関数を次のように定義します.( \(w\neq 0\) とする)

$$\log w = \log |w| + i\arg w$$

ここで,三角関数の周期性から \(e^{x+iy}=e^{x+i(2\pi n+y)}\) となるので, \(\arg w\) に \(\pm 2\pi n\) を加えた値も \(\log w\) の解となってしまいます.つまり \(\log w\) は無限個の値を取ることになります.

ここで,主値( \(-\pi \lt {\rm Arg}\ w \leq \pi\) )を用いて対数関数を

$${\rm Log}\ w = \log |w| + i\ {\rm Arg}\ w$$

と定義し直すことで, \({\rm Log}\ w\) がただ 1 つの値を取るように定義することができます.このように定義することで,対数関数は \(w\neq 0\) かつ \({\rm Arg}\ w\neq \pi\) の範囲で,正則関数となります.

微分は,

\begin{eqnarray} ({\rm Log}\ w)’&=& \lim_{\Delta w \rightarrow 0} \frac{{\rm Log}\ (w+\Delta w) \ – \ {\rm Log}\ w}{\Delta w} \\ &=& \lim_{s \rightarrow w} \frac{{\rm Log}\ s \ – \ {\rm Log}\ w}{s-z} \quad\quad (s=z+\Delta z)\\ &=& \lim_{t \rightarrow z}\ \frac{t-z}{e^t – e^z} \quad\quad (t={\rm Log}\ s\ ,\ z={\rm Log}\ w)\\ &=& \frac{1}{e^z} = \frac{1}{w} \\ \end{eqnarray}

によって与えられます.

 

4.5. 一般の指数関数

一般の指数関数 \(a^z \ (a\in\mathbb{C}\setminus \{0\} )\) を定義します.

まず,実数に限って考えると,

$$a^x = e^{x\log a}$$

が成り立つので,この関係を複素数に拡張して,

$$a^z = e^{z\log a}$$

と定義します.この定義により当然 \(a^z\) は一意に定まらない.したがって,改めて,

$$a^z = e^{z\ {\rm Log}\ a}$$

と定義し直すと, \(a^z\) は複素平面上で正則な関数となります.

今回は以上です.お疲れ様でした.

Please Share