ボレル集合族と可測関数【ルベーグ積分2】

ここではボレル集合族,可測関数,単関数について定義し,その性質を見ていきます.

この章では後の証明のために必要な命題を多く取り扱っているのでルベーグ積分の概要のみを知りたい方はそれぞれの定義と以下のことを覚えた上で【ルベーグ積分3】に進んでもらって構いません.

・可測関数 \(f:S\to [0,\infty]\) はある可測単関数列 \(\{f_n:S\to [0,\infty)\}_{n\geq 1}\) の上極限として表現できる.

このことは命題 2.3.5 によって確認できます.

 

1. ボレル集合族

記号
・ \(\mathbb{R}\cup \{-\infty,\infty\}=[-\infty,\infty]\) を \(\overline{\mathbb{R}}\)と表す.
・ \(I=(a,b]\ \ (-\infty\leq a < b\leq\infty)\) を \(\overline{\mathbb{R}}\) 上の左開区間といい, \(\mathscr{I}\) を \(\overline{\mathbb{R}}\) 上の左開区間全体とする.
・ \(\Pi_{1\leq j\leq d}I_j\ \ (I_j\in\mathscr{I})\) を \(\overline{\mathbb{R}}^d\) 上の左開区間といい, \(\mathscr{I}^d\) を \(\overline{\mathbb{R}}^d\) 上の左開区間全体とする.

ボレル (Borel) 集合族の定義
ボレル集合族 \(\mathscr{B}(S)\) を次のように定める.
・ \(S\subset \overline{\mathbb{R}}\) に対して, $$\mathscr{B}(S):=\sigma[\mathscr{I}]_{\overline{\mathbb{R}}}|_S \overset{\text{(命題1.4)}}{=} \sigma[\mathscr{I}|_S]_S$$ ・ \(S\subset \mathbb{R}^d\) に対して, $$\mathscr{B}(S):=\sigma[\mathscr{I}^d|_{\mathbb{R}^d}]_{\mathbb{R}^d}|_S \overset{\text{(命題1.4)}}{=} \sigma[\mathscr{I}^d|_S]_S$$

\(A\in \mathscr{B}(\overline{\mathbb{R}})\) または \(A\in \mathscr{B}(\mathbb{R}^d)\) のとき,\(A\) をボレル可測といいます.

\(\mathbb{C}^d\) については \(\mathbb{R}^{2d}\) と自然に同一視して同様にボレル集合族を定めます.

以下の命題の証明は行いませんが(面倒なので)ボレル集合族をイメージする上で重要です.

命題 2.1.1
\(\mathbb{R}^d\) の開集合全体を \(\mathscr{O}^d\) とするとき, \(\mathscr{B}(\mathbb{R}^d) = \sigma[\mathscr{O}^d]_{\mathbb{R}^d}\) .
このことから \(\mathscr{B}(\mathbb{R}^d)\) は \(\mathbb{R}^d\) の任意の開集合,閉集合を含む.

 

命題 2.1.2
\(\overline{\mathbb{R}}\) に対して, \(\mathscr{I}_{\infty}=\{[-\infty,b]\mid b\in \mathbb{R}\}\) , \(S\subset\overline{\mathbb{R}}\) とするとき, $$\mathscr{B}(S) = \sigma[\mathscr{I}_{\infty}]_{\overline{\mathbb{R}}}|_{S}$$

証明
\(\mathscr{B}(\overline{\mathbb{R}}) = \sigma[\mathscr{I}_{\infty}]_{\overline{\mathbb{R}}}\) を示せば \(\mathscr{B}(S) = \mathscr{B}(\overline{\mathbb{R}})|_{S} = \sigma[\mathscr{I}_{\infty}]_{\overline{\mathbb{R}}}|_{S}\) がわかる.
\(\mathscr{B}(\overline{\mathbb{R}}) \subset \sigma[\mathscr{I}_{\infty}]_{\overline{\mathbb{R}}}\) を示す.このためには \(\mathscr{I} \subset \sigma[\mathscr{I}_{\infty}]_{\overline{\mathscr{R}}}\) を示せば十分.この包含は \(a,b\in \mathbb{R}\) としたときに以下が成り立つことからわかる.
$$(a,b]=[-\infty,b]\setminus [-\infty,a]$$ $$(-\infty,a] = \bigcup_{n\geq 1}(-n,a]$$ $$(a,\infty] = \overline{\mathbb{R}}\setminus [-\infty,a]$$ \(\mathscr{B}(\overline{\mathbb{R}}) \supset \sigma[\mathscr{I}_{\infty}]_{\overline{\mathbb{R}}}\) を示す.このためには \(\mathscr{B}(\overline{\mathbb{R}}) \supset\mathscr{I}_{\infty}\) を示せば十分.この包含は \(a\in \mathbb{R}\) としたときに以下が成り立つことからわかる.
$$\{-\infty\}=\overline{\mathbb{R}}\setminus (-\infty,\infty]$$ $$[-\infty,a] = (-\infty,a]\cup \{-\infty\}$$

 

2. 可測関数

ここでは \((S,\mathscr{A})\) , \((T,\mathscr{B})\) を可測空間とします.

可測関数の定義
関数 \(f:S\rightarrow T\) が条件
任意の \(B\in \mathscr{B}\) に対して \(f^{-1}(B)\in \mathscr{A}\)
を満たすとき, \(f\) を \(\mathscr{A}/\mathscr{B}\) 可測(または単に可測)であるという.また,可測関数全体を \(\mathbb{M}((S,\mathscr{A})\to (T,\mathscr{B}))\) と書く.

定義から容易に次の命題が示されます.

命題 2.2.1(可測関数の合成)
\((S,\mathscr{A})\) , \((T,\mathscr{B})\) , \((U,\mathscr{C})\) を可測空間とし, \(f:S\to T\) , \(g:T\to U\) を可測関数とするとき, \(g\circ f\) は可測関数である.

 

3. 単関数

ここでは \((S,\mathscr{A})\) を可測空間とします.

単関数の定義
\(f(S)\) が有限集合のとき,関数 \(f:S\to T\) を単関数という.

単関数はイメージとしては棒グラフや階段のようなグラフですが,

$$ f:\mathbb{R}\to\mathbb{R}\ ;\ x\mapsto\left\{ \begin{array}{cc} 1 & (x\in \mathbb{Q}) \\ 0 & (x\notin \mathbb{Q}) \end{array} \right. $$

のような関数( Dirichlet 関数 )も単関数となります.

命題 2.3.1
関数 \(f:(S,\mathscr{A})\to (\mathbb{C},\mathscr{B}(\mathbb{C}))\) について次は同値である.

(1) \(f\) は可測な単関数.
(2) \(f\) は \(S\) の分割 \(\{A_j\}_{j=1}^n \subset \mathscr{A}\) と \(\{\alpha_j\}_{j=1}^{n} \subset \mathbb{C}\) があって, $$f = \sum_{j=1}^n \alpha_j 1_{A_j}$$ と表せる.ここで, \(S\) の分割 \(\{A_j\}_{j=1}^n\) とは \(S=\sum_{j=1}^{n} A_j\) となるものである.また, \(1_{A_j}\) とは \(S\) から \(\mathbb{C}\) への関数であり, \(x\in A_j\) ならば \(1_{A_j}(x)=1\) , \(x\notin A_j\) ならば \(1_{A_j}(x)=0\) となるものである.

証明
(1) \(\Rightarrow\) (2) を示す.
まず, \(f(S)\) は有限集合なので \(f(S)=\{\alpha_j\}_{j=1}^n\ \ (i\neq j\Rightarrow\alpha_i\neq\alpha_j)\) と書ける.また, \(\{\alpha_j\}\in \mathscr{B}(\mathbb{C})\) かつ \(f\) は可測関数なので \(f^{-1}(\{\alpha_j\})\in \mathscr{A}\) である. \(A_j=f^{-1}(\{\alpha_j\})\ \ (j=1,2,\cdots,)\) と定めると, \(\{A_j\}_{j=1}^n\subset \mathscr{A}\) は \(S\) の分割である.また, \(x\in A_j \Leftrightarrow f(x)= \alpha_j\) なので (2) を得る.

(2) \(\Rightarrow\) (1) を示す.
任意に \(B\in \mathscr{B}(\mathbb{C})\) をとる.このとき, \(\{\alpha_{j_k}\}_{k=1}^m = \{\alpha_j\}_{j=1}^n \cap B\) とすると, \(f^{-1}(B) = \bigcup_{k=1}^m A_{j_k}\in \mathscr{A}\) よって \(f\) は可測関数である.単関数であることは明らか.

 

命題 2.3.2
\(f,g:(S,\mathscr{A})\to (\mathbb{C},\mathscr{B}(\mathbb{C}))\) が可測な単関数ならば, \(f+g\ ,fg\) も可測な単関数である.

証明
命題 2.3.1 より \(f,g\) は $$f = \sum_{i=1}^m \alpha_i 1_{A_i}\ ,\quad g = \sum_{j=1}^n \beta_j 1_{B_j}$$ と書ける.ここで, \(\{A_i\cap B_j\}_{i,j}\) は \(S\) の分割で, $$f+g = \sum_{i,j} (\alpha_i+\beta_j) 1_{A_i\cap B_j}$$ $$fg = \sum_{i,j} (\alpha_i \beta_j) 1_{A_i\cap B_j}$$ が成り立つ.よって,命題 2.3.1 より \(f+g\ ,fg\) は可測な単関数である.

容易にわかるように定数関数は可測単関数なので可測単関数の定数倍はまた可測単関数となります.

次の命題は \(f\) が可測関数であることを確かめるには,\(\sigma\) 加法族の生成系の元でのみ定義を満たすことを確認すれば十分であることを表しています.

命題 2.3.3
\(\mathscr{G}\subset 2^T\) , \(\mathscr{B}=\sigma[\mathscr{G}]\) , \(f:S\to T\) とする.このとき, $$f\in \mathbb{M}((S,\mathscr{A})\to (T,\mathscr{B})) \Longleftrightarrow \forall G\in \mathscr{G},\ f^{-1}(G)\in \mathscr{A}$$

証明
\(\Longrightarrow\) は明らか. \(\Longleftarrow\) を示す.
\begin{eqnarray} &&\forall G\in \mathscr{G},\ f^{-1}(G)\in \mathscr{A} \\ &&\quad \Longrightarrow \forall G\in \mathscr{G},\ G\in f(\mathscr{A}) \\ &&\quad \Longrightarrow \mathscr{G}\subset f(\mathscr{A}) \\ &&\quad \Longrightarrow \mathscr{B}=\sigma[\mathscr{G}]\subset f(\mathscr{A}) \\ &&\quad \Longrightarrow \forall B\in \mathscr{B},\ B\in f(\mathscr{A}) \\ &&\quad \Longrightarrow \forall B\in \mathscr{B},\ f^{-1}(B)\in \mathscr{A} \\ &&\quad \Longrightarrow f\in \mathbb{M}((S,\mathscr{A})\to (T,\mathscr{B})) \end{eqnarray}

 

命題 2.3.4
\(\{f_j\}_{j=1}^d\subset \mathbb{M}(S\to \mathbb{R})\) , \(\varphi\in \mathbb{M}(\mathbb{R}^d\to \mathbb{R}^n)\) なら, $$\varphi(f_1,\cdots,f_d)\in \mathbb{M}(S\to \mathbb{R}^n)$$ 特に \(f+g\ ,fg\in \mathbb{M}(S\to \mathbb{R})\) である.

全く同様の証明により \(\mathbb{R}\) を \(\mathbb{C}\) に変えてもこの命題は成り立ちます.

証明
\(f:S\to\mathbb{R}^d\) を \(f(x)=(f_1(x),\cdots,f_d(x))\) と定めると, \(\varphi(f_1,\cdots,f_d) = \varphi\circ f\) なので, \(f\) が可測であることを示せば \(\varphi(f_1,\cdots,f_d)\) が可測であることが示される.
まず,射影 \(\pi_j:\mathbb{R}^d\to\mathbb{R}\) が可測であることを示す.
任意に \(I\in\mathscr{I}|_{\mathbb{R}}\) をとると, \(\pi_j^{-1}(I)=\mathbb{R}^{j-1}\times I \times \mathbb{R}^{d-j}\in \mathscr{B}(\mathbb{R}^d)\) .したがって,命題 2.3.3 より, \(\pi_j\) は可測である.
次に \(j=1,\cdots,d\) に対して \(\pi_j\circ f\in \mathbb{M}(S\to \mathbb{R})\) が成り立つとき, \(f\) が可測であることを示す.任意に \(I=\Pi_{j=1}^d I_j \in \mathscr{I}^d|_{\mathbb{R}^d}\) をとると, $$f^{-1}(I)=\bigcap_{j=1}^d (\pi_j\circ f)^{-1}(I_j)\in \mathscr{A}\subset 2^S$$ となる.したがって,命題 2.3.3 より \(f\in \mathbb{M}(S\to \mathbb{R}^d)\) である.

 

例 2.3.1
\(C(\mathbb{R}^d\to \mathbb{R}^n)\) を連続関数全体とすると次が成り立つ. $$ C(\mathbb{R}^d\to \mathbb{R}^n)\subset \mathbb{M}(\mathbb{R}^d\to \mathbb{R}^n) $$

証明
\begin{eqnarray} &&f\in C(\mathbb{R}^d\to \mathbb{R}^n) \\ &&\quad \Longleftrightarrow \forall O \in \mathscr{O}^n\ ,\ f^{-1}(O)\in \mathscr{O}^d \\ &&\quad \Longrightarrow \forall O \in \mathscr{O}^n\ ,\ f^{-1}(O)\in \mathscr{B}(\mathbb{\mathbb{R}^d}) \\ &&\overset{\text{(命題2.3.3)}}{\Longleftrightarrow} f\in \mathbb{M}(\mathbb{R}^d\to \mathbb{R}^n) \end{eqnarray}

 

例 2.3.2
\(S\subset \overline{\mathbb{R}}\) に対して, \(f:(S,\mathscr{B}(S))\to(\overline{\mathbb{R}},\mathscr{B}(\overline{\mathbb{R}}))\) が単調増加ならば \(f\) は可測である.

証明
命題 2.1.2 , 2.3.3 より,任意の \(b\in \mathbb{R}\) に対して,\(f^{-1}([-\infty,b])\subset \mathscr{B}(S)\) となることを示せば良い.
\(f^{-1}([-\infty,b]) = \{x\in S \mid f(x)\leq b\}\) と表せる.ここで \(f\) が単調増加のとき,任意の \(a\in f^{-1}([-\infty,b]) \) に対して \(S \ni x\leq a\) ならば,\(x\in f^{-1}([-\infty,b])\) が成り立つので,\(c=\sup f^{-1}([-\infty,b])\) とおけば, \(f^{-1}([-\infty,b]) = [-\infty,c]\cap S\) である.ここで \([-\infty,c]\in \mathscr{B}(\overline{\mathbb{R}})\) なので,\(f^{-1}([-\infty,b])\in \mathscr{B}(S)\) である.

 

例 2.3.3
可測な関数列 \(\{f_n:S\to \overline{\mathbb{R}}\}\) に対して,
\[\sup f_n,\ \inf f_n,\ \overline\lim f_n,\ \underline\lim f_n\] も可測である.

証明
・ \(f = \sup f_n\) が可測であることを示す.
任意の \(B\in \mathscr{B}(\overline{\mathbb{R}})\) に対して \(f^{-1}(B)\in \mathscr{A}\) を示す.命題 2.3.3 ,命題 2.1.2 より任意の \([-\infty,b]=B\in \mathscr{I}_{\infty}\) に対して \(f^{-1}(B)\in \mathscr{A}\) を示せば良い.
そのために \(f^{-1}([-\infty,b]) = \bigcap f_n^{-1}([-\infty,b])\) を示す.
\(f^{-1}([-\infty,b]) \subset \bigcap f_n^{-1}([-\infty,b])\) であることを示す. \(x\in f^{-1}([-\infty,b])\) とすると全ての \(n\) で \(f_n(x)\le f(x)\in [-\infty,b]\) であり \(x\in f_n^{-1}([-\infty,b])\) である.
\(f^{-1}([-\infty,b]) \supset \bigcap f_n^{-1}([-\infty,b])\) であることを示す. \(x\in \bigcap f_n^{-1}([-\infty,b])\) とすると全ての \(n\) で \(f_n(x)\in [-\infty,b]\) となる.ここで, \(f_k(x)=f(x)\) となる \(k\) が存在するときは明らかに \(x\in f^{-1}([-\infty,b])\) である. \(f_k(x)=f(x)\) となる \(k\) が存在しないときは \(f_{n(k)}(x)\nearrow f(x)\) となる数列 \(\{n(k)\}_{k=1,2,\cdots}\) が存在するが \(f_{n(k)}(x)\leq b\) より \(f(x)\in [-\infty,b]\) である.
したがって,仮定より \(f_n^{-1}([-\infty,b])\in \mathscr{A}\) であるので, \[f^{-1}([-\infty,b]) = \bigcap f_n^{-1}([-\infty,b]) \in \mathscr{A}\] ・ \(f = \inf f_n\) が可測であることを示す.
\(\inf f_n = -\sup (-f_n)\) が成り立つので可測である.ここで \(a\in\mathbb{R}\) に対して \(f\) が可測なら \(a\cdot f\) も可測であることを使ったが,これの証明は簡単なので省略する.

・ \(f = \overline{\lim} f_n\) が可測であることを示す.
\(\overline{\lim} f_n = \lim_{n}\sup_{k\geq n}f_k = \inf_{n\geq 1}\sup_{k\geq n}f_k\) であることからわかる.

・ \(f = \underline{\lim} f_n\) が可測であることも同様に示せる.

 

命題 2.3.5
関数 \(f:S\to [0,\infty]\) に対して次の3つは同値である.
(1) \(f\) は可測関数である.
(2) 可測単関数列 \(f_n:S\to [0,\infty)\) で \(f_n\nearrow f\) となるものが存在する.
(3) ある \(\{A_n\}_{n\geq 1}\subset \mathscr{A}\) と \(\{\alpha_n\}_{n\geq 1}\subset [0,\infty)\) があって, \[f = \sum_{n=1}^{\infty} \alpha_n 1_{A_n}\] と表せる.

証明
(1) \(\Rightarrow\) (2) を示す.
\(g_n(x)=2^{-n}\lfloor 2^nf(x)\rfloor\) , \(f_n(x)=\min\{n,g_n(x)\}\) とおく.ここで, \(\lfloor\cdot\rfloor\) はガウス記号である.このとき, \(f_n\) は可測な関数である.
なぜならば, \(h_n(x)=\min\{n,2^{-n}\lfloor 2^nx\rfloor\}\) は単調増加な関数であるので,命題 2.3.6 より可測であり, \(f_n = h_n \circ f\) であるので, 命題 2.2.1 より \(f_n\) は可測である.
また, \(f_n\) は単関数である.なぜならば \(2^n h_n(x)=\min\{n2^n,\lfloor 2^nx\rfloor\}\) より \[f_n(S)\subset \{k/2^n\}_{k=0}^{n2^n}\] となるからである.
次に \(f_n\leq f_{n+1}\) を示す.そのためには \(g_n\leq g_{n+1}\) を示せば良い.
ここで, \(a\in\overline{\mathbb{R}}\) に対して, \(2\lfloor a\rfloor \leq \lfloor 2a\rfloor\) が成り立つ. \(a=-\infty,\infty\) なら良い. \(a\in \mathbb{R}\) なら, \(n\in \mathbb{Z}\) と \(r\in [0,1)\) で, \(a=n+r\) と書けて, \[\lfloor 2a\rfloor = \lfloor 2n+2r\rfloor \geq \lfloor 2n\rfloor = 2\lfloor n\rfloor = 2\lfloor a\rfloor\] このことから, \[g_{n+1}(x)=2^{-(n+1)}\lfloor 2^{n+1}f(x)\rfloor \geq 2^{-n}\lfloor 2^{n}f(x)\rfloor = g_n(x)\] がわかる.
最後に \(\lim f_n = f\) は \(\lim g_n = f\) を示せば良い. \(f(x) = \infty\) ならば \(g_n(x) = \infty\) であり, \(f(x) \lt \infty\) なら \(g_n(x)\) の定義から \(0\leq f(x)-g_n(x) \leq 2^{-n}\) よりわかる.

*黒線が \(f(x)\) を赤線が \(f_n(x)\) を表す.


(2) \(\Rightarrow\) (3) を示す.
\(g_1=f_1\) , \(g_n=f_{n}-f_{n-1}\) とおくと \(g_n\) は非負単関数で, \(f=\sum_{n\geq 1} g_n\) と書ける.また命題 2.3.1 より, \(g_n = \sum_{i=1}^{k^{(n)}} \alpha^{(n)}_i 1_{A^{(n)}_i}\) と表せる.したがって, \[f=\sum_{n=1}^{\infty}\sum_{i=1}^{k^{(n)}} \alpha^{(n)}_i 1_{A^{(n)}_i} = \sum_{n=1}^{\infty} \alpha_n 1_{A_n}\] ただし,第二項から第三項は以下のように添字を書き換えている. \[ \begin{matrix} A^{(1)}_1 & A^{(1)}_2 & & A^{(1)}_{k^{(1)}} & A^{(2)}_{1} & \\ \downarrow & \downarrow & \cdots & \downarrow & \downarrow & \cdots \\ A_1 & A_2 & & A_{k^{(1)}} & A_{k^{(1)}+1} & \\ \end{matrix} \]

(3) \(\Rightarrow\) (1) を示す.
\(F_N=\sum_{n=1}^{N} \alpha_n 1_{A_n}\) は命題 2.3.2 より可測な関数( \(\{A_n\}\) が分割とは限らないが共通部分で分割を作って命題 2.3.2 の仮定を満たすようにできる)で, \(f=\lim_N F_N\) であるので,命題 2.3.7 より \(f\) は可測な関数である.

 

少し長かったですがこれでルベーグ積分を定義する準備が整いました.次回,ルベーグ積分の定義と性質を紹介します.

今回は以上です.お疲れ様でした.

 

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